涯 底そこひ =護良親王=



     総じてこの為に――?
     選ばれたりし者、と高じてよいのですか?


     幾多返あまたかへ幾十度いくそたびも夢を結んだ
     天下に泰平を――
     打返うちかへ返々かへすがへすも身柄を奮い立たせた
     孤独な者である故に


     手を差し出した 取った者達がいた
     亡数なきかずに入った者達、生滅しょうめつを共にした者達がいる
    

     臨むがかたきなら
     焼き滅ぼさむあまの火もがもと案定あんじさだむ
     しかれども対するは君が心
     これはきざみ 如何すべからむ


     何が どこが 取り違った?
     最早心得難し


     己をたばかることに労々じていた
     かかれば口上など出来ようもなかった
     るは
     ただ、・・・・・・愛してほしかった


     ひきやかな空
     思増すは瞋恚しんい


     さだあはひ
     ゆくりかにそぼたる頬
     あぁ これはそぞろ涙
     そう、・・・・・・故由ゆゑなどないのだ



--------------------------------------------------------------------------------  護良親王⇒後醍醐天皇  鎌倉宮と墓所を訪れて感じたものを言葉に落とし込んでみました。  詩中にある「愛」と「空」は古語として使っています。